アーユルヴェーダとは
有益な人生と無益な人生
幸福な人生と不幸な人生
生命にとって良いものと悪いもの
生命の長さ(寿命)
生命の本質(人生そのもの)
が説かれるもののことをいう。
チャラカサンヒター総論編第1章41節
上記が古典「チャラカサンヒター」に書かれているアーユルヴェーダの定義です。
アーユルヴェーダは古代インドで生まれ、世界最古の歴史をもつ医学の一つだと言われています。医学と言うと「病気」に重きを置きがちですが、上述の古典の言葉から分かるように、アーユルヴェーダは「人」そのものに重きを置き、人の生命(人生)全般に関する知識を説いています。
・・・身体・精神・魂の三本柱が一体となって生命を支えている。この三位一体の生命が人間であり、アーユルヴェーダの主題である・・・
チャラカサンヒター総論編第1章46-47節より
・・・ヴェーダ学者たちは、生命(人生)の知識であるアーユルヴェーダを最も神聖な学問とみなしている・・・
チャラカサンヒター総論編第1章43節より
人の生命とは「身体・精神・魂」より成り、人生とは「受精の瞬間から死ぬその時まで続く」とアーユルヴェーダでは定義されています。
この学問によって、全ての人が、生まれてから死ぬまでの人生を「より健康に、より幸福に暮らすこと」がアーユルヴェーダの目的です。
国連の専門機関である世界保健機構(WHO)は、アーユルヴェーダを「独自の理論と治療方法を持つ、現存する世界最古の医療体系のひとつ」であることを認め、「心身の健康増進/病気予防に有効な伝統医療/代替補完医療」として推奨しています。
・・・アーユルヴェーダは健康人にも病人にも最上の道であり、病因論と症候論と治療論の3原則を備えた永遠不変の神聖な学問である・・・
チャラカサンヒター総論編第1章23-24節より
・・・物質の「類似」は増加を引き起こし、「相違」は減少を引き起こす・・・ 「類似」が同一化をもたらすのにたいして、「相違」は多様化をもたらす・・・
チャラカサンヒター総論編第1章44-45節より
アーユルヴェーダの知識は体型的で緻密なものですが、その理論は自然法則に基づいたものであり、突き詰めるととてもシンプルです。例えば、「肌が乾燥」しているときに「乾燥しているもの(例えば、油ぬきの生野菜サラダ)」を食べれば乾燥が増すし、「油分のあるもの(例えば、肉や魚のスープ)」を食べれば乾燥は軽減する・・・といった類似と相違の原則です。
このようなシンプルな自然法則をもとに、食事・運動・日常ケアなどの生活養生を行うことで、私達はみな「自分で病気を予防し、健康を守り、増進すること」ができるとアーユルヴェーダでは考えます。
身体と精神は、健康を生じると同時に病気を生じる場でもある。身体と精神の良いバランスが健康の基盤である。
チャラカサンヒター総論編第1章55節より
アーユルヴェーダでは、病気と健康の原因は「体内バランス」であると考えます。
その人にとって良いバランス状態であれば「健康」となり、バランスがとれていない状態であれば「不調」となりますが、食事等の生活習慣、仕事や人間関係等のストレス、季節や環境汚染等・・・さまざまな要因により体内バランスは変化します。
自分に合った生活養生を行うことで体内バランスを整え、さらにオイルトリートメント等の浄化法、強壮法を行うことで、生まれながらに持っている生命力(自然治癒力)を最大限に高め、外からのストレスに負けない若々しく丈夫な身体作りを目指します。
ドーシャは増悪すると増悪度に応じた症状を現わし、減少すると平常時の機能が消失し、平衡状態にあると生理的機能を果たす。
チャラカサンヒター総論編第17章62節より
アーユルヴェーダでは、人の生命は「ヴァータ(風)」「ピッタ(火)」「カパ(水)」という3つの体内エネルギーにより支えられていると考えます。
これら3つの体内エネルギーを「トリドーシャ(3つの病素)」と呼び、ヴァータ・ピッタ・カパのバランスが崩れることで病気になると考えます。
ドーシャバランスは季節や年齢、生活習慣等によって刻一刻と変化します。アーユルヴェーダの体調管理、病気予防法は、自分のドーシャのバランスをみて、乱れたバランスを整えることと言えるでしょう。
また、ドーシャバランスは生まれながらにして一人一人異なり、それが「体質(個性)」と表現されます。自分の体質にあった生活養生法を行うことで、さらなる健康増進をはかり、自分らしい幸せな人生を送ることを目指します。
参考文献: チャラカ本集 総論篇 せせらぎ出版